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2024 .04.26
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三浦しをんのブックガイド本『三四郎はそれから門を出た』で紹介されていた本作。若き医師・漆原は身体の麻痺を抱える老人達に対する最新の医療方法として、回復の見込みのなくなった手足=廃用身を切断する「Aケア」を考案した。自らが院長を務める老人医療の専門施設「異人館クリニック」の患者達に「Aケア」を施していく漆原。「Aケア」後、痴呆症状にすら改善が見られ活力を取り戻していく老人達と、それに自信を持ち始める漆原。しかし、人体切断という衝撃的な「医療行為」に世間のバッシングは高まり――。
本作は、前半は漆原が「Aケア」を世間にアピールする目的もあり執筆した一般向け医学書(そのタイトルが『廃用身』)、後半がその原稿を漆原から託された編集者・矢倉の「編集部註」で校正されているのですが、前半を読んでると、だんだん「Aケア」の有用さが頭に染みこんでくる。麻痺した手足を切り落としエネルギーを動く手足により多く回せるようにする、そして重い身体を介助しなくてはいけない家族の介護負担を減らす……これは画期的な治療法なのではないか? 心理的な抵抗を乗り越え「Aケア」が実用化できたら、老人医療の未来に画期的な光が差すのではないか?

漆原執筆の医学書『廃用身』は9章で幕を閉じ、本全体の半分ほどから始まる「編集部註」。註の1ページ目1行目でいきなり、『廃用身』を書き上げた後の漆原がどうなったのか、その未来の一端を知らされる。脱稿から転落までの間に何があったのか。漆原の過去や世間からの批判の嵐。漆原は何故「Aケア」というショッキングな「医療」を思いついたのか。その最初の種はどこにあったのか。
そして、漆原の末路と、その後に残ったもの。



読後、私はまだ「Aケア」を全面否定できませんでした。
自分が、自分の大事な人が回復の見込みのない廃用心を抱えた時、切断により状況が改善するという希望に、夢を見ずにいられる自信がありませんでした。



作者の久坂部羊は医師なんですね。医療関連のノンフィクション(エッセイなのか?)も出していらっしゃる。
医師兼作家といえば作品ががんがん映画化されている海堂尊が有名だと思いますが、久坂部氏の方が私が好みですね。
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